今回は(も)統計的な内容が濃く、原文で読む際は集中力と糖分を要した。

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・相関による予想

二つの指標の相関関係の分析は様々な場面で行われる。。

例えばバスケットボールでは一試合当たりの得失点差が大きいチームほど勝ち星が多くなる。

このことは感覚的には当然のように見えるが、相関を使うとこの傾向を数字で表すことができる。

つまり、得失点差からシーズンの成績がある程度予想できるということになる。


実際に当てはめるため2000-2001シーズンと2001-2002シーズンのロケッツの例を見る。

ロケッツはこの二年でほとんどメンバーも年間の得失点差が変わらなかった。

相関式から計算すれば2000-2001シーズンのロケッツは40勝程度するべきだという結果になったが、実際には34勝しかしなかった。

原因は20点差以上の勝利が五回あったのに対し、6点差以内の敗戦が19試合あったから。

つまり、大差で勝ち僅差で負けたことで、得失点差が示す以上に負けが多くなった。


次の2001-2002シーズン、ロケッツはメンバーもあまり変わらないにも関わらず勝利を9勝も上乗せし、45勝した。

このことは、この2年の勝利数の平均が、統計によって求められた勝利数に近づいたということを示している。

この2シーズンの差は何なのだろうか?
運か、それとも経験か。 

2000-2001シーズンのロケッツは運がなかったので34勝しかできなかった」と見るのは強引すぎるかも知れないが、NBAではこのようなケースが他にも多く見られるのは事実である。

そして、平均で見れば統計から導かれる予想に収束している。


・チームの継続性について

あくまで予想は予想である。

機械的に数字を当てはめた結果に過ぎない。


次に、チームの継続性について統計的に見ていく。

すると、環境が不安定なチームは良いスタッツを残しても成績は下がるが、悪いスタッツを残すとスタッツ以上の成績になることが判明した。

つまり、チームが不安定な場合、スタッツから予想される成績よりも実際の成績の方が勝率5割に近くなる。
不安定とは試合毎の得点・失点にバラツキがあるチームのことだ。 


例えば、一試合平均得点106,失点103のチームがいくつかあった場合、継続性のあるチームの方が不安定なチームより良い成績を残すことが分かっている。
経験は少なからずものを言うらしい。 


実際に1995年のジャズを見る。

ジャズはジェリー=ウェストHC、ストックトン、マローンを中心に継続性の塊のようなチームだった。

この年のジャズはシミュレーションよりも得点と失点のばらつきが減っていた。

これはチームが安定していることの結果である。


そして、チームが安定的であることはプレーヤーが安定的であることにもつながる。

歴史を見れば偉大なプレーヤーは偉大であるとともに、安定している。
 

一方で、議論が巻き起こるプレーヤーは安定性に欠けている部分が大きい。ニック=ヴァン=エクセルやピート=マラビッチ、アレン=アイバーソンなどだ。

生まれながらに才能に満ちているタイプの選手は競争が十分ではないので不安定になる可能性がある。

また、若い選手が多いチームは不安定になる傾向がある。

しかし、ラストショットを撃つことを恐れてはならず、本当に恐れなければならないのは正しいショットやパスを選択できているかどうかだ。




・アンダードッグと不安定な戦略

しかし、戦略上不安定な策が必要な場合が存在する。

POで明らかに格上のチームと対戦する場合、アンダードッグには不安定あるいはリスキーな策が必要である。


リスキーな戦略とは何だろうか?

プレスを仕掛けることで速攻やイージーショットを狙う

3Pを多投し、大量得点を狙う

③リードを奪った場面でペースを下げてポゼッションの数を減らす


細かいものだと

ポストでボールを入れさせないようフロントガードする

PGをオフェンスリバウンドに参加させる

③極端なビッグラインナップ、あるいはスモールラインナップを敷く


これらの戦略はオフェンスのバリエーションを増やす。

プレスを仕掛ければ失点の変動が大きくなるし、3Pを増やせば得点の変動が大きくなる。

ペースを落としてオフェンスとディフェンスの相乗効果を減らすと、オフェンシブレーティングとディフェンシブレーティングの乖離が大きくなる。


また不安定な戦略は、相手の取った戦略にも影響される。

相手がゾーンDFをすれば、比較的3Pが撃ちやすくなるしペースが低下しやすくなる。


実際にアンダードッグが強豪チームに勝利した試合ではこれらのリスキーな戦略が複数使用されていることが多い。

1992年のフロリダ州立大は強豪のノースカロライナ大学に対して序盤に3Pでリードを奪った。

その後はゾーンDFを敷くとともに、ショットクロックが一桁になるまではシュートを撃たない徹底的なペースダウンにより勝利を掴んだ。


私は決してこれらの戦略をやみくもに勧めているわけではない。

だが、もしアンダードッグが強豪に挑むとき、場合によってはリスキーな戦略を取る必要はあるだろう。


僅差の試合では、アウェーゲームなら逆転を狙いホームなら同点を狙うというのも一つの戦略的な決断である。

このように、安定感のあるチームはスタッツ以上の成績を残すことが珍しくない。
しかし、その一方で勢い、若さ、戦略によりそれらを乗り越えてきたバスケットボールの歴史も忘れてはならないだろう。


ホームコートアドバンテージについて


最後に、ホームコートアドバンテージについて考えよう。
ホームコートアドバンテージとは応援、慣れ 、妨害、移動の疲労などの種々の理由からホームチームに有利に働くことだ。
シーズンではこれを得るために82試合も試合をしていると言っても過言ではない。
ではそこまでして得るホームコートアドバンテージとはどれほどのものなのだろうか。 


ホームチームの得点と失点に注目すると、
2000-2001シーズン全体においてホームチームは一試合当たり96.7点を取り93.5点を取られている。

 NBAの1年間全試合における全チームの得点合計は失点合計と等しくなるはずなので、この約3点の開きはホームコートアドバンテージによるものと考えられる。
逆にホームコートアドバンテージを相手に握られると約3点の不利を被るので、この6点分を巡り順位を争っているのだ。
そして、この年のホームチームの勝率は
59.3%であった。