NBAなくて時間は空いてる最近、でも異動で職場が変わるので引っ越し準備でてんやわんや。
急にど内陸からオーシャンビューの職場に移動することになるとは、NBAでトレードされた選手もこんな感じなのかな。
というわけで引っ越しの気分転換がてらに記事流し見。

今季目覚ましい活躍を見せていたジャ=モラント。
モラントの活躍についてはシーズンが終わってからじっくり振り返ろうと思っていたけど、モラントのインパクトはそんな悠長なことを許さなかった。

今季くらいから新しいMEMファンも増えた印象があり、それは間違いなくモラントのおかげだと思う。
MEMファンのコミュニティは決して大きくはないし、コア4時代があまりにも強烈すぎたためややもすれば過去の幻影を追いがちにになりそうな中で新しい風を吹かせてくれたと個人的には感じている。

そんなモラントはSLAM誌の最新号でカバーをかざった。
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グリズリーズの選手がカバーを飾ったのはGrit N Grind時代の2013年以来である。
当時を知るMEMファンは感慨深いものもあるだろう。

(当時のファンホイホイ)
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ある雨の日のメンフィス、オールスターゲームが盛況に終わった日の夕方からシーズン再開に向けてみんな数日の休暇を取っていた。
いや、みんなというのは正確ではない。
ジャ=モラントはチームのスローバックユニフォームに身を包み体育館に現れた、そのチームは本来モラントをドラフトできなかったであろうチームであり、モラントはそこで2年前には考えもしなかったNBAベストルーキーの位置にいる。

昨季チームの歴史に残る2人の殊勲な選手をトレードしたチームは迅速にリセットボタンを押すことができた、その多くはモラントの輝きのおかげだ。
しかしモラントの最優先事項はグリズリーズをウエスタンカンファレンス最後のプレーオフスポットに導くために戦うことだ。
「名声のためここにいるわけじゃない。そんなものは全くいらない。
自分の仕事をするためにここにいるんだ。」

こういう風になるとは予想できなかった。
事実グリズリーズは最も不安定なポジションにいたからだ。
コンリーとマルク=ガソルを組ませザック=ランドルフやトニー=アレンのような選手をフィットさせてきたのは我々いやNBAの総意として本当に素晴らしい歩みだった。
7年連続でPOに出場し2013年にはカンファレンスファイナルまで進み、そして2017年に衰えが始まった。

グリズリーズについて話すとき私は「我々」と言ってもよいだろう。
10年もの間SLAM誌で働いた私は3年前にグリズリーズのGrind City Mediaをクールにするために雇われた。
私がメンフィスに着いた時にはグリズリーズのGrit and Grindのカルチャーは薄れ始めていた。
Z-boとTAは他の場所にいてジャレン=ジャクソンJrが加わって、グリズリーズの基盤は徐々にかつてとは違うペース&スペースというNBAの基準の方へと進みつつあったのは確かだ。

全てが変わったのは2019年5月28日、ドラフトロッタリーのおかげだ。
グリズリーズより良い指名権を得られるはずのチームが7チームもあった、top6指名が得られなければそもそも指名権が他チームに移ってしまう状況だった。
封筒が開かれた、私はその時テレビから目を離していたがCMに入るとTop3指名権を得たチームが再度リマインドされていた。
ニューオーリンズ、ニューヨーク、そしてメンフィス!
CM明けまで妻と息子がその場から動かないようにした、こんな幸運を無駄にしないように。
そしてペリカンズがザイオンを得たことを知った。
問題ない、我々はジャを得た。

「メンフィスはとてもイカしたものになろうとしている、自分たちが信じるこの街の素晴らしさを見せつけて証明しようと心の底から思っているからね。
NBAの街にしては小さいけれど俺たちにはソウルがある。」
と以前ペニー=ハーダウェイは語っていた。

メンフィスには素晴らしいサンセット、力強い川と音楽、世界最高のバーベキューがあって何より努力する限り偉大になれるチャンスがある。

「グリズリーズファンと一緒にいる時にできないこと、それは君の職業倫理で彼らを欺くこと。
彼らは自分が従う基準を持っている。
間違いや欠点はハードにプレーすることで埋め合わせる、110%を出している限りOKさ。」
Grind Fatherのトニー=アレンは語る。

メンフィスはジャ=モラントにとってパーフェクトな場所だ、彼はセメントコートで見えない努力を重ね、見落とされた存在からドラフト2位指名まで駆け上がった。
彼はジョージアで生まれサウスカロライナで育ちケンタッキーにある大学に通った南部の少年でもある。
そして、今彼はテネシーにショーを見せている。


「神がプランを与えてくれたようだ。これはタイミングさ。
僕に起こっていることや僕が置かれているポジションは全て、自分自身のハードワークと神の思し召し、神が与えてくれたタレントのおかげだ。
全てに感謝してプッシュし続けるだけだ。」
とモラントは語る。


彼が参加したグリズリーズの初めての公開練習は地元の高校の体育館で行われた。
モラントの名前がアナウンスされると、彼は立ち止まって完璧なMirry Rockダンスを披露した。
試合が始まると我々は全てを目の当たりにした。
彼は得点を取り、テンポを上げファストブレイクでもハーフコートでも完璧な読みを見せた。
しかし、彼を見て楽しい選手にさせていたのは試合のあらゆるところに散りばめられた彼のムーブだった。
それは純粋なジャズ、本物のアドリブとイマジネーションだった。

我々は皆自分のお気に入りの瞬間がある。
ユタジャズ戦でボールを自分の背中に回しながらユーロステップで相手を抜いてレイアップを決めたシーンのように。
同じ試合中にチームメイトのジャレン=ジャクソン越しにアリウープを決めた。
その数週間後には違うチームメイト、ブランドン=クラーク越しにダンクを決めた。

試合から帰ってくると毎晩息子は「今日ジャは何かトリックをした?」と私に聞いてくる。
私の答えはいつもYesだ。
どうやら彼は枯渇することはないようだ、ボールフェイク、カットドリブル、パスフェイク、スピンムーブ、バックドリブル。
それらはジャの父ティーにとっては皮肉かもしれない、彼は息子が幼い頃にトリックのビデオは見せないようにしていたのだ。

「そんなビデオは訳あって見なかったんだ。
僕のゲームにそんなものは必要なかったといった感じかな。
基礎から取り組み始めたし、それが自分をより高みにつれていくだろうと。
人々は僕がクレイジーなワークアウトか何かしたんだと思っているかもしれないけど、主に基礎を習得して、基礎が身に着いたらさらに前に進み、ドリブルをつき、物事を簡単にして自分を良いプレーヤーにしてくれただけのことさ。」
とモラントは思い返す。

しかし、楽しさなしに基礎に魔法をかけることはできない、全ての衝撃的なプレーはモラントの装飾から生まれているように見える。
小さい選手相手に点を取った時には"too little"セレブレーションや"rock the baby"モーションを、ハードダンクを叩き込んだら信じられないという感じでボールや自分の手のひらを見つめ続ける。
数週間前にヘッドバンドを解禁した際は"ヘッドバンドJa"と紹介してくれるよう頼んだ。
アシストを決めたら手を眼鏡のように目に当てる。
今やコート上、ベンチのプレイヤー達がそのセレブレーションに加わっている。

「父にはコート上では楽しむようにといつも言われたよ。楽しめないならゲームをプレーしていないだろう。
だから毎晩コートに入れば自分が楽しみ、興奮をもたらそうと思うし、チームの勝利を助けようとしているよ」
とモラントは語る。

グリズリーズは最初の22試合で6勝であった、今季は結果よりも成長のシーズンになるだろうと思われた。
しかし事態は変わり、年が明けると7連勝しオールスターブレイクまで19試合で15勝を挙げた。
彼らは自らのハッスル&フロウを見つけ出し、HCのジェンキンスは1月の西地区最優秀HCに選出された。

「お互いに成長をして一つのチームとして固まることが全てさ。
シーズン開始時は個人個人だったものがシーズンを通して一つのチームになったように感じているし、全員が同じマインドセットでプレーしているんだ。」
とモラントは言う。

一方で、モラントはドリンクをかき混ぜるストローでもある。
1日目から私にとって印象的だったのは彼のスコアリングではなくビジョンであった。
モラントは生まれながらに得点だけでなくアシストを重ねることも楽しんでいるようだ。
コーナーへの展開、リムランするビッグマンへのノールックパス、ベースライン沿いのパスやハーフコートで針の穴を通すパス、何であれチームメイトの得点の30%はモラントのアシストから生まれている。

3か月連続で月間最優秀新人に選ばれた、彼は新人王に値するだろうか?
「じきに分かるさ」とモラントは答えた。

久々に、もしかしたら生まれて初めてモラントは正当な評価を得た。
高校時代、彼は多少騒がれはしたがカレッジは中堅大学だった。

2年後モラントはカレッジバスケットボール史上初の平均20pt、10astを達成しカレッジの競争を支配するが、それはトップレベルの環境でプレーしていないからだという声も挙がった。

しかし、今やそんな声は消えた。
彼はNBAという舞台で世界最高の選手達と戦っている、彼はリーグにいるだけではなくベストプレーヤーの一人だと証明してみせた。
Twitter上でステフ=カリーとクレイ=トンプソンは殺し屋だとツイートした匿名の投稿にはこう返した。

"彼らは確かに殺し屋だ。彼らのゲームのファンじゃないとは言わない。
でも僕も殺し屋さ。"

「僕はいつもこのようなマインドセットを持ってきた。
誰も恐れる理由はない。
彼らもみんなと同じように靴とかを身に着けているんだ。」

モラントはイカした存在にもなりたいと思っている。
グリズリーズのNext Genはまだ始まったばかりだ。

「俺たちは満足なんてしてないよ。
まだシーズンは半分あるし伸びしろだってある。
地に足をつけ自分たちのやるべきことをやるだけだ。
殻を破り、毎晩戦い、共にプレーし、我々が世に出るためにもっと勝利して正しい場所で成長するよう努めるのさ。」
とモラントは語る。
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今から思い返してもドラフトでモラントを取れたのは強運だった。
若いゲームメイカーは再建における最優先事項だし、ポジション的にも役割的にもザイオンよりドンピシャだ。
もしグリズリーズが1位指名権を当てていたら流石にザイオンを見過ごしてトレードダウンする勇気はなかっただろうし、3位以下なら確実にモラントは穫れていなかった。
ドラフト2位という指名権がグリズリーズには絶妙すぎたね、まぁザイオンがMEMに来ててもそれなりに暴れてたとは思うけど。
そういう意味ではザイオンもモラントも良いタイミングで良いチームに指名されたと思う。

そういえば確かにドラフト時にはモラントの大学での活躍がカレッジのレベルとスモールサンプルのおかげだという記事もあった気がする。
今の活躍を見れば高校時代からのスターザイオンに対し、モラントがカレッジ2年で化けた選手だというのはにわかには信じにくい。
まだスモールサンプルという言葉に頼った方が現実味がある気がする、要するにこれはそれだけモラントの成長が素晴らしかったことの裏返しなのだと思う。

ただ、モラントがシーズン後半へのモチベーションを語る中シーズンが中断されたのは残念だ。
今季の予定については未定だが、今はまだシーズン再開を議論できる状況ですらない。

モラントのように地に足をつけ取り組む時間なのかもしれないね。
新たな趣味や分野に手を出す機会でもあるかもしれない。
こんな時だからこそ前向きに。